墨攻 ★★★★

墨攻

墨攻

アニオタ的知識からいうと酒見賢一といえば第一回日本ファンタジーノベル大賞をとった「後宮小説」でありそれを原作とした「雲のように 風のように」なわけで。主に中国を舞台としたフィクション作家だけど、文体はとても読みやすくなぜか文章全体にユーモアを感じます。あれからもう20年も経つんだなぁ。

その昔中国には儒家などと並んで墨家と呼ばれる思想集団があった。彼らは高い戦闘技術を持ちながらも「非攻」の教えを守り決して攻めることがない、と。この物語は墨者である主人公「革離」が趙に攻められる小国を守るため単身赴き、2万5000の大群相手に1500の村人と共に奮闘し、ついには・・・というところで意外な結末を迎えるというものです。文字が大きく、文章量も比較的少なく、また先述したとおりとても読みやすい文体なのでコミック感覚で読めるんじゃないでしょうか。

高い技術を持ちながら非戦というのはどことなく今の日本に通じる考えで、その考えを持つ墨家が中国の歴史から消え、敵の大将である巷淹中が「世に害をなす」と感じたのは興味深いです。終戦記念日も近いことですので軽めの一冊にいかがでしょうか。

どうやらこの小説を元にしたコミック版やそのコミック版を元に映画化もされている模様。機会があれば鑑賞してみたいです。